――昔、ぼくが住んでいた家――



147 :大人になった名無しさん :04/02/20 11:27
都心のど真ん中、高いビルの間に申し分けなさそうに建っていた家。
せまくて、いつもビルの陰。
住人は少なくて、学校は1学年1クラス。
余った教室の方が生徒のいるクラスよりも多かった。
治安も悪くて、毎日パトカーが何時間かに一回通って、
月に一度はどこかでヤクザの小競り合いがあったりした。

時期はちょうどバブルの真っ最中。僕らは地上げにあった。
家のあるところに新しいビルが建つ計画が立って、僕らは出なければならなくなった。

引っ越してから、何度か家を見に行った。
足場の中でだんだん形を失っていく家。
ありがとう、さようならって何度も心の中で言った。

何年か後、バブルがはじけて結局ビルは建たなかった。
あれからまた人がいなくなって、小学校は廃校になった。
だだっぴろい駐車場のままでも、僕には家のあった場所がはっきりわかる。
解体中、こっそり貰ってきた壁の一部は、今でも宝物だ。