>>一生忘れられないあの駅&列車・2<<



380 名前:名無し野電車区 投稿日:02/07/18 07:12 ID:???
何年も帰っていない実家にあるとき用があっていった。
父は仕事で不在、母がいつものように纏わりついてくる。
親と話す事もなく、いらいらと「あ〜、早く自分の家に帰りてー」と
ぶつぶつ思っていた。いくら血がつながっていても、合わないものは合わない。

新幹線の時間が迫り、それを理由にいそいそ準備をする自分。
泣き言や脅しやいろんな事を理由にすがり付いてくる母親。
少しの殺意も感じながら、とにかく出て行こうとしていたとき、父が仕事から
もどってきた。いつもならもっと遅くなるのに、変な感じがした。
冬の寒い中、カブから下りると、前の籠の仕事かばんから何か取り出して
冷たくなった手から渡される。
たまたま仕事場でお土産にもらったから持っていって新幹線で食え、という。
うざったいので適当に返事をしてカバンのポケットに放り込み、二人に
おざなりに挨拶し、タクシーに乗りこんだ。
ああ、これでやっと家に帰れる。
新幹線で、かばんに放り込んだものをあらためて取り出すと、それはお菓子だった。
それも、ふわふわして柔らかい、ちょっと手のひらに取ったくらいですぐに崩れる。

父親は、それを潰れないように自分の仕事カバンの一番上に入れ、冬の帰宅の道のりをバイクで飛ばし、
形が崩れない様に持って帰り、自分に両手で手渡した。
それはカバンの中でちょっと扁平に形が変わっていた。

なんか、新幹線のトンネルの中で、窓に映る自分を見てぼろぼろ泣いた。
理由はわからなかったが、博多から大阪に着くまで、ずっと泣いた。
お菓子を潰れないようにカバンに入れなおして、持って帰った。

自分の家で一口食べると、ふんわり柔らかくてすぐに口の中でとけて消えた。