嗚咽 その8



32 :大人の名無しさん :2005/04/12(火) 04:42:10 id:DI4KASlD
今日、母が祖父母を家に連れて来た。
庭の満開の桜を見せに連れてきたのだった。
祖母は病気で入退院を繰り返していて、祖父も今年倒れ救急車で運ばれていた。

去年、俺が結婚した時は、今よりは元気で結婚式にも来てくれた。
祖母は体が弱っているにもかかわらず「絶対出たい」と言って母を困らせていたらしい。
何かうれしくて「幸せにならなきゃ」と思っていた。
だけど嫁さんとは3カ月で別れてしまった。超最低女で罵詈雑言投げつけられての離婚だった。

母は、祖父母に会うときは「あの2人は仲良くやっているよ」と言って心配させないようにしてくれていた。
今日祖父母が来たと聞いた時は、正直会いたくないと思った。妹が来て「今来てるからあいさつしてあげて」と言った。
表に出てみると、祖父母は母の車に乗ったまま、桜を見ていた。体が弱っていて降りてこられないようだった。

俺の顔を見ると、顔をくしゃくしゃにして手を振った。
「祖父母は、今でも母の言葉を信じているのだろうか」と思うと辛くてその場から逃げ出したかった。
母はすぐに車を発進させ、そのまま出て行った。
夕食の時、母は「おじいちゃんとおばあちゃんな、もう桜見納めやなあってゆうとったわ」とぽつりと言った。
母は今日一日、何か元気がないようだった。