【さて】育児板・泣いた話 part2【ほんのり】



92 名前:名無しの心子知らず 投稿日:03/01/26 23:44 id:n9OQ//C1
もうすぐ5歳になる長男が産まれた朝、病院では深夜から
妻の父、私、私の母と妹の4人がその時を今か今かと待っていた。
産声が聞こえ、初めて対面する我が子が分娩室から出てきた。
他人事のようにしか感じられず、実感がない。
私が1つのことだけを考えていた。

私は3歳の時に交通事故で右脚を失って義足を使用している。
それでも、非常に幸運なことに、それなりの職に就き、皆に祝福される結婚をした。することができた。

日常生活にもさほど不自由はしていない。つもりだ。
私は先天的であれ、障害の有無は1/2の確率だと思っている。
「有る」か「無い」かの2つに1つだと。

我が子はどうなのか。五体満足なのか。処置されながら、時折しか見えない我が子の体を食い入るように見つめる。
手足の指の数や、目鼻口などのパーツが揃っていることを視認。
第一段階をクリアしただけで、もうどうでもよくなった。
「いらっしゃい。よくきたね。これから楽しいことばっかりだよ」
心の中でそう思って小躍りした。

だが、よくよく見ると、右脚が明後日の方向を向いている。
皆もそれに気づいているようだが、誰も口にしない。
私だけが疑心暗鬼でそう見えているだけかもしれない。
「あの脚、ちゃんと立てるのかな?」私は口に出して皆に確認した。



93 名前:名無しの心子知らず 投稿日:03/01/26 23:46 id:n9OQ//C1
母の顔が青ざめている。
母は私が産まれたときに、まず手足の指の数を数えたという。
船乗りでいつも不在の父の分まで頑張って私を育てた母。
私は母を安心させることのできる、自立した障害者になりたかった。
長男の誕生で、更にその理想に近づけると思っていたのに。

しかも私と同じ右脚。タチの悪いジョークのようだった。

おそるおそる医者に尋ねてみると、
「内反脚ですね、今はなんとも云えませんが..etc」と言われた。

このことを妻に伝えると、ひどく動揺した様子だったが、
「大丈夫だよ。医療も進歩してるし、新生児だし」と妻や家族を励まし、
帰って寝ることにした。


病院を出ると、外は肌寒く朝日が昇りつつあった。
ああは云ったものの、頭の中はそのことでいっぱいいっぱい。
車を走らせて、最初の信号停車で
「まぁ、最悪切断して義足だっていいじゃん。」と思ったら、
自分の中で全てが解決して、うれしくて涙が出た。
生涯で唯一障害者でよかったと思えた瞬間でした。
息子よありがとう。

長男は手術することもなく、当初の矯正だけで今に至っています。