二度と会えない友達



350 :大人になった名無しさん :04/12/21 17:42:36
高校一年の冬のことだ。
当時おれは彼女こそいないものの、仲の良い女友達がいた。
放課のチャイムが鳴り、クラスメートのほとんどが部活へ行く。
教室に残るのは決まっておれたちだけだったっけ。
誰もいない放課後の教室で、おれたち二人は、何気ない話をしたり、アーティストの話をしたり、時には悩みを相談したり…。
どちらかというと勉強は得意な方ではなかったおれが毎日の学校を苦にしていなかったのも
今思い返せば、放課後にあいつと話せる楽しみがあったからなのかも知れない……。

そうこうしているうちに二学期も終盤に差し掛かってきた。
クラスの女子たちはクリスマスの話で盛り上がっている。
おれは、ある男のダチから「悔しいけど今年は一緒に過ごそうか」と言われていた。
カコイイと評判だったそのダチだが、お互いに彼女がいなかった上に
何より男のダチの中で一番気の許すことができるやつだったから、その提案を快く承諾した。

そして迎えたクリスマス。
そのダチと映画を観て、カラオケへ行って…、楽しかった。
おれは電車、ダチは自転車。駅のホームで別れ、おれは電車で家へ向かった。

家から最寄の駅で降りるおれの目に驚くべきものが映った。
そこには冬だというのに汗だらけの例の女友達の姿があった。
驚くおれに、ニコっと笑い「こんばんわ」。
公園にでも行こうと誘われ、おれは戸惑いながらも、彼女と共に公園へ足を向けた。
ベンチに座り込むおれたち二人。何故か気まずく、会話も成立しない。
…と、突然にも彼女が少し小さな箱を渡してきた。プレゼントだという。
渡すなり「急にごめんねー。じゃ、風邪引くなよっ」と笑いながら、公園を去る彼女。
走り去る彼女の背中は、何故か寂しいそうに見えた。
ようやく冷静さを取り戻したおれは心の中で、自分を探し回って汗をかくあいつを浮かべた―。

冬休みが終わり、三学期が始まる。
あれからバイトやらで忙しく、あいつに御礼を言う暇がなかったおれは、今日言おうと思っていた。
遅刻寸前で教室に入ってみると、彼女の姿が見当たらない。
風邪かと心配しながらも自分の机へ向かった。
少しして入ってきた担任の教師から、あまりにも残酷な言葉が発せられた。
親御さんの離婚が関係して、転校したとのことだ…。
おれは呆然と抜け殻のようになり、気づいたら放課のチャイムが鳴っていた。
高校一年の冬が幕を閉じた―。

それ以来、会ったことはない。
もう結婚して幸せに暮らしているのだろうか。
そうなっていたら、と心からそう思う。
でも、届けたかった…。あいつに「ありがとう」を……。
今でもプレゼントはおれの部屋に飾ってある。
そう、あいつと行った東京ディズニーランドで撮った、屈託のない笑顔で映る二人の写真が――。