思い出してホローリくる家族との思い出Part2



836 名前:おさかなくわえた名無しさん 投稿日:02/08/01 06:04 ID:6a8CZqWm
八十も半ばを過ぎた祖父が今、脳梗塞で明日をもしれない状態にいる。
病院に運び込まれた時にはもう手の施しようがない状態で、意識の回復も望めないだろうと宣告された。
それでも最初の数ヶ月は多少の反応があった。目も殆ど見えていないらしかったし
体を起こす事も出来ないけど、手足や頭はよく動かしていた。ちょっと喋りもした。
でも、痴呆状態で殆ど分かっていないかもしれないと医者に言われた。
実際、運び込まれてすぐの時に「ありゃ、本拠地に攻め込んだから負けたんだ」とか
じいちゃん得意の戦争話を呟いていた事もあったし(苦笑)
気道切開されてからは、祖父が出来るのはごくごく簡単な質問に僅かに首を振るだけで、
こっちの事が分かってるのか分かってないのか、ちゃんと確かめることはずっと出来なかった。
それでも付き添いに行った時は出来るだけ話しかけた。
あんまり口数の多い人じゃなかったから、二人だけでちゃんと話したことなんて
一度も無かったけど、何でも良いから話しかけて、体をさすった。
ある日いつものように話かけながら手を握ると、祖父が親指の腹で掌をぎゅっ、ぎゅっ、と押してきた。
それもいつものことだったから「おじいちゃんさ、よくこうやってマッサージしてくれるよね。
これ結構気持ち良いよ?」って冗談めかして言ってみた。
そしたら次の瞬間ぐいっと手を引かれて手首を強く掴まれた。
驚いて動けずにいると、今度は手首から肩にかけてをぎゅっ、ぎゅっ、と……。
その瞬間、今まで掌や指を押してくれたのは、じいちゃんなりの「ありがとう」だったんだって気付いた。
じいちゃん分かってる、分かってるから泣いちゃいけないって思ったけど、
声が震えないようにガマンして「ありがとね」って言うのが精一杯だった。

今、じいちゃんはばあちゃんの所に行こうとしてる。
コーヒーが好きでついこの間まで現役で仕事してて戦争の話が得意な自慢のじいちゃん。
じいちゃんの掌の感触だけは、一生忘れないよ。