キャッチボール



46 名前:大人の名無しさん 投稿日:02/06/30 12:16 ID:9fB+Y7/q
小学生の頃。
夕方、親父の経営する零細工場の脇で一人壁打ちしてると、親父が軽トラで出先から帰ってきて、
一旦工場の中へ消え、グローブを持って出てくる。
グローブを付けた方の腕を黙って上げる親父。そのグローブめがけて黙って投げる俺。
球が何度か往復した頃、初めて親父が口を開く。
「次、カーブな」
落差に驚き、捕球することができず、後逸した球を追いながら親父を誇らしく思う俺。
5年後に、あれがいわゆる「しょんべんカーブ」だと認識するまで、親父は堀内より、江夏
より、偉大なピッチャーだった。

不況のあおりで工場が倒産し、グレて家を飛び出したのが20年前。
それから一度も親父に会わなかった。
今年の初め、新聞で親父の孤独死を知って駆けつけた時には、もう骨になっていた。

親父の住んでるボロアパート、知ってたのに。近くを何度も通ってたのに。
「もう少し生活が安定したら親父を引き取る」
自分を正当化し続けてきた身勝手な言い分けは、もう親父には届かない。

映画「フィールド オブ ドリームス」って、あれ反則だよな。